有機・無添加の発酵食品は高額だけど中身がない!?

前章までは安全な野菜とはどんなものかについて考えてみました。この章では安全な食生活に欠かせない発酵食品の自然について考えてみたいと思います。
■目次
1、有機・無添加発酵食の現状は?
2、自然発酵のプロセスとは何か!?
3、お米の自然な発酵プロセスはこう!
4、世界に誇る発酵食品の現状はこう!
5、スピード重視で味と安全が犠牲に!
6、生命操作の知られざる実態に迫る!?
7、高額だけど実態がない!情報公開を!
味噌や醤油、お酒にお酢、納豆にパン・・・。
どれも発酵食品といわれる食材です。
発酵食品とは、お米や大豆、小麦や果実などに菌が付着することで熟成される食材のこと。
食の安全を追求したいあなたなら、味噌や醤油などは、
”有機や無添加のものを選びたい!”
そう思われていることでしょう。
でも、有機や無添加と書かれた発酵食品であっても、とても自然とは言えない。そのようなものにすっかり作り替えられてしまっているのです。
発酵の主役である菌が化学的に培養され、操作されたものに変えられてしまっている。
ここでは菌の自然を考えることで、安全な発酵食選びのポイントをチェックしていきましょう。
■自然発酵のプロセスとは!?
ブドウを潰して、乾燥しないようにしておくと、
泡が出てくる。
臭いを嗅いでみると、ワインになっている。これが自然発酵のあり方です。
ブドウの糖分に空気中から酵母菌が引き寄せられる。そして酵母菌が糖分を食べることでアルコールと二酸化炭を作り出す。
潰したブドウは空気中の酵母菌によってワインになったのです。
でも、自然発酵のプロセスはそこで終わりとなりません。次があるのです。ワインをそのままにしておくと、また変化していくからです。
今度はワインのアルコールを目当てに空気中から酢酸菌が入り込み「お酢」に変える。ワインビネガー(バルサミコ酢)に変えられるわけです。
ブドウ ⇒ ワイン ⇒ お酢
このようにそれぞれの段階で働く菌の違いにより、潰したブドウは変化して行くのです。
でも、それでもまだ終わりにはなりません。最終段階があるからです。最終段階とは、
「水」
お酢は最後は水になって自然に戻っていくのです。
■お米の発酵プロセスは!?
自然発酵のプロセスを私たちの主食のお米で見てみると、
最初にお米のデンプンを目がけて空気中から麹菌が入り込みます。麹菌はお米のデンプンを食べることで糖に変えていく。
糖に変えられた状態が「甘酒」です。
麹菌がデンプンを糖に変えると、今度は糖を目がけて酵母菌がやってきます。糖を食べることでアルコールと二酸化炭素に分解するのです。
この状態が「日本酒」です。
そして酵母菌がアルコールに変えた後に来るのは酢酸菌。酢酸菌は日本酒を「米酢」に変えるのです。
そして最後は酢酸分解菌が入って、お酢を水に変えていく。
このように炊いたお米は、
「甘酒」⇒「日本酒」⇒「お酢」⇒「水」
このような変遷を辿り、最後は地球に還っていくのです。
■世界に誇る発酵食品群
私たちの祖先はこうした自然発酵のプロセスを理解して、世界に誇る稀少で豊かな発酵食品群を作り出してきました。
味噌や醤油、米酢、みりん、焼酎、納豆、カツオ節、漬物などなど…。
今に生きる私たちに数えきれないほどの恩恵を与えてくれています。
昔の味噌屋や醤油屋の蔵の梁にはビッシリと麹菌がついていたものです。それを採取してお米や大豆、小麦などに振りかける。こうして発酵食を代々にわたって引き継いできたわけです。
でもそれが戦後の歩みの中で全く違うものへと変化してしまいました。
天然の菌たちを利用することをやめ、化学的に培養した菌を使うようになったのです。そして今ではそれ一色となっているのが、有機・無添加を含んだ発酵食品の現状なのです。
■より速くより多くより安く!
お酒は3か月、お酢は6か月、味噌は10か月、醤油は1年半。
自然発酵では最低このくらいの熟成時間が必要になります。
発酵食品は長期熟成が前提であり、その間にビタミンやミネラル、各種有機酸、酵素など、私たちに有用な物質も蓄積されていくのです。
でも、それではあまりに効率が悪い。時間ばかりがかかってしまう。
もっと速く・もっと多く、商品化できないものか?
こうした理由で化学培養、化学操作菌が使われるようになったのです。
化学の力を用いれば、時間のかかる発酵食品を素早く速醸することができます。今は100円ショップでも安価なお酢が売られていますが、それらは1日やそこらで作られます。
自然発酵のお酢だと半年かかるものがたった1日で製造できてしまう。こうしたことから化学操作・培養菌が普及し、広く定着していったのです。
■操作培養の実態は!?
また自然発酵は手間ヒマがかかり、しかも熟練の技が不可欠です。材料の選定から温度管理、水分量の調整など、匠の技と経験が必要になるのです。
また今のお米や大豆、小麦などは化学肥料や農薬が使われているため、天然の菌たちが付着できなくなっている。天然の菌が働けない素材ばかりになっているのです。
でも化学操作培養菌を使えば、誰でも簡単に速醸できる。本来、青カビや黒カビなど腐敗菌の温床になってしまうような劣悪な素材でも、化学の力で素早く強制的に発酵させることができるのです。
当然速醸しているため、味もないし栄養分もほとんどない。だから化学調味料を添加して味つけをし、ビタミンなどの栄養剤を添加する。
化学の力で帳尻合わせを行い、速く・安く・大量に仕上げるのです。こうして有機や無添加と呼ばれる発酵食品であっても、化学培養菌を使うことが当たり前になっているのです。
以前は”手前味噌”なんて言うように、家の中に浮遊する天然の菌たちを使って自家製で作るのが当たり前でしたが、今では種麹メーカーから買うものになっているのです。
メーカー製造の菌たちは元はといえば自然界に生きる菌。でもそれらの菌に突然変異を起こさせて、化学抽出されたエキスや化学調味料、肉汁、ビタミンやミネラル剤などを使って菌を培養し、それを発酵菌として使っているのです。
中には、特定の機能を高めた商品を作り出すために、紫外線や放射線、ガンマ線、X線などを菌たちに照射し、突然変異を誘発させ新たな能力を獲得させる。そしてその後に薬品で培養する。
こうしたものも少なくないのです。
ビタミンが豊富な発酵食、骨を強くする発酵食、ニオィのない納豆など、特殊な機能を持った発酵食品はこのような方法で作られているのです。
問題はこうした化学培養菌や突然変異を誘発させる化学操作・培養菌の使用を明示する表示義務がないこと。
私たちはその発酵食品にどのような菌が使われているのか?そのことを一切知らされることなく、日々食べているわけです。
■情報公開の徹底を!
有機や無添加と書かれた発酵食品は、通常のものよりも数倍、何十倍もの値段がするのは当たり前です。
でも、そこに使われている発酵の主役であるはずの菌たちが、得体の知れない肉エキスや化学調味料、ビタミン剤、放射線照射などを駆使して作られたものであるとしたら、本当にその値段を出して買いたいと思うのかどうか?
安全安心の名のもとに高い食材を売るわけだから、こうした情報がしっかり暮らし手に届くようにすることは最低限必要なのではないでしょうか?
以前勤めていた有機野菜の宅配団体で、この化学培養菌や化学操作菌の問題を指摘したところ、
「それは知られてないことだからね。事態が発覚し、声が強くなったら対応するよ」
そんな風に言われてしまったのです。この発言を上層部から聞き、私は未練なく辞表を出したのが経緯です。
私の話はさておき、
今の味噌や醤油、酒に納豆などの食材は、ほとんどが化学培養菌、化学操作菌が使って作られています。有機・無添加を謳った高額な味噌や醤油を買うならこのことを了解の上で購入することをオススメします。
でも、こうした薬剤まみれの発酵食品の現状に対して立ち上がった勇気ある蔵元やメーカーさんも少なからずいます。
そして本来の先祖代々受け継がれてきた伝統の方法で発酵食品を再生させる、そうした取り組みを地道に行っている少数の業者もいるのです。
そしてそうして作られた本物の発酵食品を食べると、天然の菌たちが織り成す深い味わいに驚かれる方も少なくありません。
「これまでの味噌や納豆は一体何だったんだ!」
そんな感想を持つ人も実に多いのです。
天然酵母パンだけが安全で美味しい食材として広く認知されていますが、味噌や醤油、納豆、酒類はほとんどこの事実が知られていません。
こうした天然の発酵菌たちによる深い味わいを、このブログをここまで読まれたあなたにぜひ堪能してもらいたいと思います。
それはあなたやあなたの家族に本来の味わいと安全を与えるのと同時に、食べる人の健康を願って面倒でも時間がかかっても、努力と研鑽を惜しまない作り手を応援することに繋がっていきます。
そして日本が誇る貴重な発酵食品の数々を世界に向けて発信していく。そうしたことにあなたの消費は繋がっていくことになるのです。
ぜひ味わってもらいたいので、以下に私が知る限りの情報を載せておきます。
次章では、私たちの主食であるお米の自然と安全について考えてみたいと思います。
>>次章・第九章へ
『有機米・無農薬米でも安全ではない?ハードなお米の実情は!?』
■この章のまとめ
・天然の発酵プロセスは酒⇒お酢⇒水の順番 ・有機無添加の発酵食も化学培養菌が使われている ・培養液は化学調味料や肉汁、ビタミン剤、殺菌剤などが使われる ・放射線やガンマ線などを浴びせかけた発酵菌も使われている ・天然菌たちによる発酵食品は少ないけど頑張っている作り手がいる |
■参考文献