子供は弱くて脆いのか?PTSD・トラウマ問題を脳の自然から考える!

行き過ぎた保護がもたらすものとは?子供に対する接し方は人生の悩みの1つでしょうが、大事に大事にがもたらしてしまうものとは?ココでは肥料も農薬も一切使わない自然栽培の栽培方法から子育てとの共通点を探ってみます。
■目次
1、子供はか弱くて脆いは本当か!?
2、か弱いのは子供より大人の方!?
3、PTSDやトラウマの真相はどうなの!?
4、基本はスパルタ!過保護がダメな実例は!
5、大正期最大の知識人が子供に残した言葉は!?
子どもは脆くて弱いもの・・・。
だから大人がしっかり見守り、保護してあげなくてはならない。
私たちはそのように考えています。
多発する子供を狙った凶悪犯罪。深刻化の一途を辿る陰湿ないじめ。ただでさえ少ない子供の数、社会全体での保護が叫ばれているのです。
大事に大事に、心にも体にもキズがつかないように。こんな感じのトーンが全体を覆っているようにも感じます。
でも、
厳重保護は果たして必要なのか?
子供は本当に脆くて、か弱いものなのか?
今回は発育のプロセスを考えることで、子供への接し方について考えてみます。
■大人の方が深刻!?
子供が脆くて弱いのは、
「思春期」
この時期は確かに繊細な対応が必要であることがいわれますが、思春期以前の子供は大人が考えるよりもずっとタフ。体力面では発展途上だけれども、精神的には想像以上に強靭である。
このような指摘だってあるのです。
誕生から年月を重ねるに従い、脳の神経伝達物質は減少していく。そうなるとウツなどの症状をより引き起こしやすくなる。
大人のうつ病の方が子供よりもずっとかかりやすいことが言われているのです。
大人の社会は自己責任でどこまでも冷酷。でも子供に限っては厳重に保護。このようなミスマッチだってあるのです。
■行き過ぎた保護の真相は!?
最近は変わっているのかもしれませんが、
学芸会では全員主役。可哀そうな脇役を作らないようにするための配慮。劣等感を植えつけないように、運動会の徒競走では勝者を作らない目的で、みんな並んでゴールイン。
そんなことが騒がれた時代が少し前にあったのです。
子供が多い時代と違い、少ないからこそ大事にする。そうした背景もあるのでしょうが、あまりに極端で行き過ぎではないか?と思うのです。
子供は脆い存在・・・、それを強力に後押ししているのがPTSD(心的外傷後ストレス障害)やトラウマと呼ばれる心の傷。
輝かしい未来を迎えるためには、幼少期の心のキズはできるだけ排除しなくてはならない。こうした言説が世の中にはイヤってほど溢れているのです。
ココロのキズを作らせない!将来に禍根を残してはならない!
こうして叱らない・怒らない・無理をさせない。とにかく大事に大事に、真綿で包んだような子育てが主流となっているのです。
でも、トラウマやPTSDの発症率を調べたアメリカのデータがあります。内訳を見てみると、PTSDを発症するケースは、
自然災害で約5%、肉体的暴行で2%弱。
もちろん一概に断定することは難しい面もありますが、実際は信じられているよりもずっとココロのキズは残りにくい。
そうした統計だってあるのです。
大事にし過ぎて過保護を続ける、それはそのまま子供の才能の芽を摘み取ってしまう結果をも招きかねないわけなのです。
ストレスが適度にあるほどに、才能は開花しやすくパフォーマンスを高めやすい、こうした指摘もあります。
心理的重圧を受けるからこそ、それに対する防御策や対処法を養うことができる。真の自立に向けて受けるべき必要なストレスだってあるのです。
親は子を永久に保護してあげることはできません。子供が試練を前に立ち尽くしてしまうのではなく、乗り越える力を養ってあげる。
そのことも大切ではないかと思うのです。
■スパルタこそが愛!
肥料も農薬も使わない「自然栽培」。
栽培成功の基本になるのはスパルタです。作物を決して甘やかさない、苦境に際しても手を貸さない。このことが基本になるのです。
人が作物に肥料を与えれば与えるほどに、作物は弱体化の一途を辿っていきます。自らエサを探し出さなくても良いので、地中深くまで根を張り巡らせる必要がない。
上げ膳・据え膳でエサを与えてしまえば、根が浅く本数も少ないひ弱な姿になり果ててしまうのです。人が保護を続け、守れば守るほどどうしようもなく弱体化していく。虫や菌の為されるがままになってしまう。
自分でエサも取れない、防御力も限りなくゼロ。そのような弱くて脆い生命にならざるを得なくなるのです。
(※参考:有機野菜は農薬とサヨナラできない!?紅葉に学ぶ自然な野菜のあり方とは?)
タネが落ちた環境で何とか生き抜き、次の世代に何とか生命を繋がせていく。自分で頑張る、手助け無用、栽培者は作物が頑張れるだけの環境を整え、後は見守る。
そのことが自然栽培の基本になるのです。これは子育てにも通ずるものがあるのではないか?
そのように思うのです。
■大正期最大の知識人の言葉
また別の子育てについての研究によれば、厳しく育てても、優しく育ても、ココロにがキズ残る確率はほんとんど変わらないといった指摘もあります。
子供はか弱いと決めつけてしまうのは、問題と対峙し解決する能力を養う貴重な機会を奪うことに他なりません。それは肥料農薬漬けの野菜と同じ道を辿るのではないか?そのようにも感じてしまうのです。
大正期の作家・有島武郎は文学作品の他に、精力的に童話を書き残しています。
有島の童話の特徴は、残酷なストーリーが実に多い。ハッピーエンドで終わるようなものをほとんど書いていないのです。
「大正期最大の知識人」、有島武郎はそのように言われたりもしますが、子どもに愛や夢といった美しい幻想ばかりを刷り込んではならない。
無常で非情、残酷な人生の実相をも学ばせる必要だってある、そうした信念のもとに数多くの童話を残しているのです。
有島は『小さき者へ』という作品で、自分の子供たちにこんな言葉を残しています。
「小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母の祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。しかし恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ」
今回は子どもについて考えてみました。
■このページのまとめ
・子供より大人の方が鬱になりやすい ・行き過ぎた過保護な子育ては才能の芽を摘み取る ・PTSDやトラウマにかかる確率は言われるほど高くない ・自然栽培の基本はスパルタ・過保護にするほど弱くなる ・子供にファンタジーばかりを教えるのではなく人生の実相も伝える必要が |
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■参考文献
『か弱き、純真な子どもという神話』中公新書ラクレ刊 和田秀樹著
『小さき者へ・生れ出ずる悩み (岩波文庫)』有島武郎 著