有機栽培は体にも環境にも優しい農法か?土の自然と安全な野菜の姿に迫る!

有機農業は環境保全型農業、そんな風に言われます。でも本当に人の体にも地球環境にも優しい農法といえるのでしょうか?
ここでは自然な土との比較から私たちが日々口にするべき本来の食材について考えてみます。
■目次
1、イメージ先行の自然食の現状は!?
2、有機農業で言うこととやるこの違いは!?
3、農学では土はこのように定義されている!
4、自然の土は何からできるのか?原材料は!?
5、有機栽培で使われる肥料の質をチェック!
6、不従物を投ずれば掃除のためにアレが働く!?
7、所詮は殺し方の違いに過ぎない・農薬の区別は無意味!?
8、土そのものが完全栄養・自然に学ぶ自然栽培の極意とは!?
言ってることと、やってること。
できれば同じにしたいものですよね。
言っていることはたいそう立派、でもやっていることはかなり最悪・・・。
それでは人から信用されないし、良い関係を結ぶことができません。それどころか、トラブルを引き起こす温床になりすい。
いつの時代も言行一致は称えられ、不一致は非難の的になる。こうしたものでもあるのです。
このブログのテーマでもある自然食業界はどうか?というと、後者に近い。
言っていることは壮大で良いことばかりを口にしますが、やっていることはかなり違う。こうしたこと面も少なくない。
イメージばかりが先行して実態が伴っていない。自然食にはこうした面も少なからずあるのです。
■土への賛歌と軽視
「母なる大地」
有機農業では、このような言い方がよくされます。農業は生命産業。自然と向き合い、自然に即して営むのが農業者の使命。土は生命を育む源だから、
”土を愛し、土をキレイにせよ!”
こうしたトーンで語られることが少なくないのです。
でも、それは表向きの話に過ぎず、実際の生産現場においてはほとんど無視されている。有機を含めた現代農業が大切にするのは、土ではなく「肥料」の方だからです。
土は軽視され続け、肥料ばかりに重点が置かれている。そういっても過言ではないのです。
■農学の定義は!?
有機栽培、一般の化学栽培、そのどちらも「農学」という学問をベースにしています。農学において土は、
非力で頼りないもの。
このように考えられているのです。
土に養分なんて存在しない。土は根っこを支えるだけのもの。作物を育むのものは土ではなく、「肥料」である。人が肥料を与えない限り作物は育たない。
こうした考え方に基づいて、現代農業は行われているのです。
作物の生産には肥料は大切。でも、化学肥料は人工物なのでキケンなもの。土を汚すばかりか、地下水や海川、空気までをも汚してしまう。だから、
自然物である有機肥料を使うべき!
このように強調されるのです。
有機肥料として使うものは自然のものなら何でもOK!そう言わんばかりに、畜産業から出る糞尿、米ぬかを発酵させたボカシ肥料、油粕。さらにミネラル豊富な海藻や魚を粉々にした魚粉、貝殻なども使われているのです。
確かにそれらは自然由来のものかも知れませんが、そこに問題はないのでしょうか?
それらは本当に自然で、土を汚さず環境を守るものなのでしょうか?
■自然の土の材料は!?
自然の「土」は何から作られるのか?
その答えは、植物の残骸です。
生命を終えた植物が新たな土の材料になっていく。落ち葉や枯れた枝、茎などに、太陽の光と地熱などの「熱」、雨や露などの「水分」、これらが加わり、そこに菌などの微生物が入り働くことで,腐食が進み分解されていく。
こうして役割を終えた葉や茎、地下部分の根などは土へと変えられていくのです。
温暖地帯において自然界が表土1センチの土を作り出すには100年~150年かかるといわれます。膨大な時間をかけて植物の残骸は土へと変えられていくわけです。
もちろん土の成分は植物だけではありません。他に動物や昆虫の死骸や糞尿、それらも自然の土の材料になります。でもそれらはあくまで部分であって、枝葉に過ぎません。
メインとなるのは植物、自然の土は植物によって作られているのです。
有機農業では一反あたりに何トン、何十トンもの家畜の糞尿が土に混ぜ込まれるケースもあります。一見、自然の循環のようにも思えますが、それだけの糞尿が一カ所に集中して大量に土に混ぜ込まれる。
そんなことは自然の土では決して起こらないわけなのです。
田畑に投入された有機肥料が地下水を汚し、海や川を汚染する。こうした指摘も長い間され続けているのです。
ヨーロッパ各国の農業政策では、面積あたりの家畜の頭数を制限し、糞尿による地下水の汚染を予防する政策を実施しています。
(※参考:スウェーデン、デンマークおよびオランダにおける畜産環境問題)
日本ではこうした規制は一切なく、有機肥料の美名のもとに田畑に大量に畜産肥料が投入され続けている。それが土を汚し、地下水を汚し、海や川をも汚してしまう。
有機肥料は環境に優しい、そうとは言い難い面もあるのです。
■肥料の質は!?
また有機肥料と一口に言ってもその状態・質はバラバラ。
何年も寝かせた後に使われる有機肥料もあれば、臭いがなくなればそれでOK!ほとんど生に近いような家畜の糞尿肥料が使われるケースもあるのです。
家畜の糞尿は当然ながら汚物なので、そこには様々な菌がいるものです。汚物を使う以上は長期熟成が大前提になりますが、完熟とは名ばかりの糞尿肥料が有機の名のもとに土に投入されている。
病原菌が野菜に付着したままそれをサラダで食べてしまうと、感染症や寄生虫などのリスクを抱えてしまう。
使われる糞尿肥料の質の悪さから、”有機野菜はサラダで食べるな!”、こう警告する声も少なくないのです。
(※参考:有機野菜の宅配選びは2つの重要ポイントをチェック!)
生に近いような糞尿肥料を畑の表土に置くだけならまだしも、土の中に混ぜ込んでしまう。それも自然の土では起こり得ないことなのです。
自然の土にも動物の死骸や糞尿は入りますが、直接土の中に混ぜ込まれることはありません。必ず表土の上に置かれたままの状態で、熱と水と菌の働きで時間をかけて土に変えられていくものなのです。
土の中に肥料分を混ぜ込むことは虫や病原菌を招く温床になり、結果として農薬を多投せざるを得なくなる。
有機肥料だからと言って、「質と量」を弁えずに使ってしまえば土を汚し、環境を汚染し、私たちの体にも害になってしまうのです。
■植物性の有機肥料は!?
”糞尿肥料は問題になりそうだな。でも植物性の肥料はどうなの?”
そう思われるかもしれません。
植物性の有機肥料とは米ぬかを発酵させたボカシ肥料や油粕、クローバーなどを青い状態のまま土に混ぜ込む「緑肥」などが植物由来の肥料です。
一見、植物なのだから良いようにも思われますが、稲のヌカ部分だけが抜き出され、発酵した状態で土の中にたくさん入り込む。
そんなことは自然界では起こらないのです。また揚げ物をした後に出る油のカスが、自ら土の中に入り込むようなこともないのです。
緑肥は入るようにも思われますが、青々とした状態の植物が土の中に直接入ることはありません。草は枯れて表土の上に置かれたまま、長い時間をかけて土になっていくのです。
また魚を乾燥させ粉々に砕いた魚粉や貝殻、海藻なども使われますが、海の生物が陸に上がって土の中に入り込む。
そんなことも決して起こらないのです。
他にも畑に稲わらや稲のモミがらを敷いたり、撒いたりするケースもありますが、水稲は水辺に生きる植物。
水辺の植物が陸の土の中に入り込む、それも自然界では起こりにくいことなのです。
稲ワラやモミがらは田んぼに還すのが自然のあり方。畑にワラを使うなら稲ワラではなく、麦ワラを使う方が適しているというわけです。
実際に、稲わらを畑に使うと土が水っぽくなると言われます。
「陸のものは陸に還す、水辺のものは水辺に還す」
これが自然な土の姿といえるでしょう。
自然の土はその場所に生きる植物の残骸から作られる。このことから、
「他から何も持ち込まない」
これが自然な土づくりのポイントになる。
その田畑で作られた作物の残骸やそこに生きる草たち、これらのみを使うことが自然な土づくりの原則になるのです。
■異物排除に使われるのは!?
土に不自然なものを混ぜ込んでしまえば、土はそれを「異物」と判断します。
異物とはそこにあってはならないもの、溜め込んではならないものを意味する言葉です。異物が入れば排除に向けた力が働く。元の自然な状態に戻すために、清掃作業を開始するのです。
侵入した異物を外に出す、それは私たちの体も同じです。何か悪いものを食べれば、嘔吐や下痢などを起こして体から排除しようと不快な症状を起こします。
また菌やウイルスが侵入すれば体は熱を出して、その活動を弱めようとするのです。体は菌やウイルスが熱に弱いことを熟知しているので、わざわざ体温を上げて対処しているわけなのです。
嘔吐や下痢や発熱は不快極まる症状ですが、そのことにより元の状態に戻すことができる。苦しい症状は元のあるべき姿に戻すための欠かせないプロセス。
にも関わらず、下痢止め薬や解熱剤などを使ってしまえば、異物は体内に残ったままになってしまう。
症状は苦しいものではあるけれど、それを経ることで治癒に向かうものなのです。
自然の土に異物、不純物が入ると、土はそれを外に出そうとします。その際使うのは植物の体です。植物を犠牲にして土の中から異物や不純物を排除しようとするのです。
具体的には、作物や雑草の根を使い異物を吸い上げさせ、それを虫や菌に食べさせる。このことで元の自然な土の状態に戻すのです。
虫や菌は農業においては常に”憎き奴”ではありますが、実際は土の洗浄のためにやってくるありがたい存在。”害虫や病原菌”、そんな呼ばれ方をされますが、本当は”土のお掃除部隊”と考えることができるのです。
虫にやられた、菌にやられた、有機も含めた現代農業ではすべてを彼らのせいにするのですが、原因は他にある。
自然の土に対して、異物や不純物を投入すること。自然に対して不自然を強いた結果、その後始末に虫や菌はやってきている。
こう考えることもできるのです。
実際に、有機肥料も化学肥料も一切使われない自然界の植物は虫や病原菌にやられにくい。虫食いだらけの野山の植物も見かけないし、病原菌に侵されドロドロに溶けている野原もないのです。
なぜ自然の植物に農薬は無用なのかといえば、土の中に異物や不純物がなくキレイだから。
田畑で虫や病原菌がたくさん出るのは、土が異物で汚れているから。野山の植物と田畑の作物とを比較すればこのようなことが分かるのです。
だから土をキレイにするためにやって来る虫や菌を農薬を使って殺すなんて、
”もってのほか!”
こういうことになるのです。
■殺すことに変わりない!
虫や病原菌を殺して悪者にしてしまえばせっかくの土の中のお掃除が中断されてしまいます。
土の中はいつまでも汚れたまま、汚しっ放しの状態になってしまうのです。
有機農業が農薬を使わざるを得ない理由は土に不純物を投入しているから。そして農薬を使えば土は汚れる一方になってしまう。
でも、自然界はその状態を許さず、次の手段で元の自然な姿に戻そうとする。それは農薬に負けないより強い虫や菌を用いて、強制的に土の汚れを撤去しようとするのです。
それが薬剤耐性の虫や菌というわけです。
虫や菌が農薬に耐性を持つ理由は、使われる肥料と農薬に原因があると推察できる。
有機認証制度では化学合成農薬の使用を基本的に認めず、漢方系の農薬を使うことを制度化しています。具体的には木酢液やニームなどを使うのです。
化学合成農薬は危険だけど、漢方系の農薬なら安全。そのような根拠で制度を定めていますが、どちらも虫や菌を殺すことには変わりはない。
”化学を使うのか?漢方を用いるのか?”
その差に過ぎないわけなのです。それは、
ハイテク兵器で殺すのか?それとも素手や石などで撲殺するのか?
どちらも殺すという結果に変わりはないのです。
土をキレイにするためのお掃除部隊の虫や病原菌を殺してしまう、それが有機農業がいつまでも農薬を手放せない理由の大きな原因になるのです。
■土は栄養のカタマリ!
肥料も農薬も一切使わない自然栽培では、
土そのものが養分のカタマリ
そう考える農法です。
土は非力で頼りないものではなく、完全栄養。作物を育てるだけの無尽蔵の力を秘めている。だから人がわざわざ養分を与える必要は一切ない。与えれば逆に害悪となる。
こう考える農法が自然栽培なのです。
農学が教える通りに、肥料が作物を育てるなら、
私たちの周りの野山はなぜ栄養失調で滅びないのか?なぜアマゾンのジャングルは太古から繁茂し続けているのか?
屋久島の縄文杉は人が肥料を与え続けた結果なのか?
こうした問題意識から自然栽培は導かれた農法といえるのです。
大自然は人が肥料を与えなくても、未来永劫にわたり植物を育み続けている。田畑でそれができないのは、自然の仕組みに背いた結果ではなかろうか?
そうであるなら自然の土に学び、それを田畑に応用すれば良いのではないか?
自然栽培はこのように考えて始まった農法です。
肥料も農薬も一切使わない自然栽培の生産者は土に不純物の投入を止めれば虫や菌は発生しないことをよく知っています。
野山の植物が常に無農薬無肥料であるのと同じで、自然栽培で化学農薬も漢方農薬も不要であるのは当たり前のことなのです。
自然を知るとは不自然を見抜くこと
これがこの農法の極意といえるでしょう。
自然栽培のお米や野菜の通販などもあるので、興味がある人は試してみると良いでしょう。
■このページのまとめ
・土は植物からできている ・土はそこに生きる植物の残骸から作られる ・土に不純物を投入すれば虫や菌が掃除にくる ・農薬で虫や菌を殺せば土は汚れたままになってしまう ・化学農薬も漢方系農薬も虫や菌を殺すことに変わりはない ・肥料も農薬も使わない自然栽培は土を完全栄養と考える農法 ・自然栽培は自然の土を田畑に応用し再現する農法といえる |
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