自然食業界キャリア15年のOBが綴る

有機野菜は農薬とサヨナラできない!?紅葉に学ぶ自然な野菜のあり方とは?

2018/10/09
 
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生協、有機野菜の宅配団体などに15年在籍し、自然食業界の裏表を目の当たりに。本当に安全に食べられる食材とは何か?日々追求しています。

前章では有機野菜でも農薬は使われる、決して無農薬ではないことについて述べてみました。

この章では農薬についての理解を深め、本当に安全な野菜とはどんなものか?を考えてみたいと思います。

■目次

1、無農薬の野菜は無知で浅はか!?
2、自然の野山と田畑の違いを考える!
3、速く・多くを求めると不自然な結果を招く!
4、虫や菌が大量に発生するメカニズムとは!?
5、美しい紅葉が物語る安全な野菜作りの秘訣とは!?
6、バカ食い爆食いがもたらす残念で不合理な結果とは!?

 

無農薬の野菜を毎日食べる!

 

思うのはカンタンだけど、実際には難しいこと。有機野菜にだって農薬が使われるわけだからどうしようもない。

 

すべてを無農薬に!それは野菜作りの現場を知らない無知で浅はかな願い・・・。

私が以前勤めていた有機野菜の宅配団体では、

 

「多少のことは仕方ないよ。できるだけ少なく使えばいいんだよ」

「自分も不完全なのに農家にばかり完全を求めるのはフェアじゃないよ!」

 

そんな風に言われてしまったわけなのです。

 

日々の野菜を無農薬にはできないのか?それは本当に無知で浅はかな願いであるのか?

 

でもやっぱり、

 

”農薬を使っていない野菜を食べたい!”

 

そんな思いで自然の野山を見渡してみると・・・、

 

どこにも農薬は使われていない

 

このことに気づくのです。

 

野山と田畑の違いとは!?

野山の植物に大量の農薬が使われる、そんな光景はどこにも見当たりません。野山の木や草を大量の虫が食べ尽くしている、そんな光景はどこにもないのです。

 

住宅街を歩けば庭先に柿や夏ミカンが実っていますが、そこに何度も農薬を撒く。そんな光景を誰も見たことないはずです。もしやれば、隣近所の大迷惑になってしまいますから。

 

植物は農薬がなくても生きられる。虫にも負けないし菌にだって侵されない。アマゾンのジャングルも、屋久島の縄文杉も、人が農薬を駆使して作り上げたものでは決してない。

 

自然界はいつだって無農薬の世界なのです。

野原

 

決定的な違いは何!?

自然の野山はいつでも無農薬。でも田畑となるとたくさんの農薬を使わざるを得ない。

 

野山と田畑とでは、何がどう違うのか?

 

この疑問を突き詰めていくと、

 

「肥料」

 

に問題があることに気づくのです。

 

肥料とは植物の三大栄養素を詰め込んだ栄養のカタマリのこと。

これを化学の力で凝縮したものが化学肥料。動物の糞尿などの自然物を使ったものが有機肥料。

 

どちらも作物が育つ成長スピードを速める目的で、

 

”より速く!より多く!”

 

の収穫を求めて使われるものです。有機であれ、化学であれ、肥料は田畑でしか使われないもの

そのように言えるのです。

 

でも、

 

化学肥料は人工物だから分かるけど、動物の糞尿だったら野山にも入るよ。

 

「それが肥料なんじゃないの?」

 

そう思うかもしれません。

 

確かに動物の糞尿は自然の野山にも入りますが、田畑のように一カ所に集中して大量に土に入り込むそんなことは決して起こらないのです。

 

有機農業では一反(300坪)に何トン、何十トンもの動物の糞尿肥料が使われることも珍しくありませんが、それだけの量の糞尿が同時期に土に入り込むそれは自然界では決して起こらないのです。

 

でも、落ち葉や折れた枝などは大量に入るよ。

 

「それが肥料になるんじゃない?」

 

そう思われるかもしれませんが、枯れた枝や落ち葉に肥料成分はほとんど含まれていません。落ち葉や枝は肥料ではなく、新たな土を生み出すためのものそう考えた方が無理がないのです。

 

岩肌にしがみつく松には落ち葉すら入ることはありません。庭のカキやミカンの木でも、落ち葉はホウキで掃き清められてしまうのです。

松の力

 

肥料は田畑でしか使われないもの。有機であれ、化学であれ、肥料を使うからこそ農薬が必要になる。

肥料と農薬は一体のもの、こういうことになるのです。

 

肥料と虫と菌の関係は!?

肥料とは植物の三大栄養素、「窒素・リン酸・カリ」を凝縮した栄養のカタマリ。

 

この凝縮した栄養分を土に投下することで、作物を”より速く・より大きく”育てる目的で使われます。中でも窒素は肥料の軸になるもので、これを使えば作物を速く・大きく育てることができるのです。

 

特に化学肥料を使えば、どんな土でも、栽培経験がなくても、どこでも誰でも野菜を育てることができる。窒素肥料は野菜栽培に不可欠なものになっているのです。

 

このように便利で効果的な窒素肥料なのですが、その反面の欠点もある。その欠点とは、

 

虫や菌を招き寄せてしまうこと。

 

窒素肥料を与えれば与えるほど虫や菌を集めてしまい、結果として農薬をたくさん使わざるを得なくなってしまうのです。

 

有機野菜の宅配業者はよく、

 

「虫が食べるほどおいしい野菜!!」

 

こんな風に宣伝しています。でも実際は、

 

「虫が食べるほど窒素過剰な野菜」

 

そういった方が正確です。窒素肥料をたくさん与えた作物を目がけて虫や菌は集まってくるからです。

 

紅葉に学ぶ自然の法則

自然の野山にも当然窒素分はありますが、田畑のように豊富にはありません。

 

だからこそ虫にたかられ息絶え絶えになっている草木はないし、病原菌に侵されドロドロに溶けている野原もないのです。

 

窒素は植物の成長に欠かせない養分なのですが、同時にそれは乏しい資源でもあります。自然の植物はいわば”貧窒素”の中でなんとかやり繰りしながら生きているのです。

 

窒素そのものは空気中の80%を占める豊富な資源なのですが、植物はそのままの形では利用することができません。

 

土の中の微生物によって植物が吸収できる形に加工してもらう必要があるからです。私たちにとって石油は貴重で欠かせない資源ですが、原油のままではどうしようもないのと同じです。

 

自然の植物にとって窒素がいかに貴重で得難いものであるか?それは秋の紅葉のシーンからも垣間見られます。私たちにとって紅葉は美しい光景ですが、もみじや楓の葉にしてみれば”最悪の状態”といえるかもしれません。

 

葉が赤や黄に色づくのは、葉の中に残留する窒素を回収している姿。色づく葉っぱは窒素を抜かれてもだえ苦しんでいる姿ともいえるのです。

 

冬場は窒素を加工する微生物たちの活動が弱まるので、ただでさえ貴重な養分・窒素の供給がさらに厳しくなる。

 

幹に窒素を回収して樹木本体を守る

 

いわば”葉を捨て幹を守る”、厳しい冬に備えている姿が秋の紅葉のシーンというわけです。

紅葉

 

過食が止まらない!

このように自然の植物にとって窒素は希少な資源なのですが・・・、田畑となるとこの窒素が豊富にある。

 

人が肥料を与えるからです

 

自然界では得難い資源がたくさんある、すると作物は根からどん欲に窒素肥料を吸い上げてしまいます。葉にドンドン送り込み、そこに溜め込んでいく。

 

あればあった分だけ吸い上げようとする、窒素の過食が止まらなくなってしまうのです。そうなると虫や菌がどこからともなく現れる。

 

過剰な窒素は虫や菌の格好のエサになるからです。

 

葉に送られた窒素肥料は植物の体内で「アミノ酸」に分解されます。そして分解されたアミノ酸同士がくっつき合うことでタンパク質や酵素といった、自らに必要な物質を作り出していくのです。

 

作物に窒素肥料を与えれば与えるほど体内にアミノ酸が充満する。アミノ酸は虫や菌たちの大好物

こうして窒素過多、アミノ酸過剰な野菜を目がけて虫や菌はやってくるのです。

 

有機であれ、化学であれ、肥料を使えば虫や菌に侵されやすい野菜になります。自然界の植物が虫や菌にやられないのは肥料が使われていないから。

 

農家は虫や菌を目の敵にし、憎き相手として徹底的に駆除するわけですが、それは自らが呼び寄せておきながら、やってきた虫を農薬を使って駆逐する。

 

このような悪循環を招いているのが今の農業の現実です。

 

無農薬の野菜作りを妨げる大きな原因は使われる肥料にある有機野菜だから安全、有機野菜は自然の産物。

 

そのようには決していえないわけなのです。

 

ココでは自然の野山と田畑の野菜を比べてみることで、「農薬」を使わざるを得なくなる理由について述べてみました。

 

次章では、もう少しだけ肥料と安全な野菜との関係について考えてみたいと思います。

>>次章・第五章へ

有機野菜はひ弱で脆い?延命措置を繰り返す理由とは?

 

前章へ:有機野菜の宅配選びは2つの重要ポイントをチェック

TOPへ:有機野菜の宅配選び・後悔しない9つのポイント! 

 

■この章のまとめ

 ・自然界は常に無農薬・農薬は田畑でしか使われない

 ・農薬を多く使わざるを得ないのは肥料に原因がある

 ・窒素肥料の多投が虫を招き、菌の増殖を許してしまう

 

■参考文献

昆虫による加害と植物の防御

窒素過多と病害発生

農薬に頼らない病害虫対策

窒素肥料を過剰に施す

施肥といもち

窒素過多

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