有機野菜の宅配選びは2つの重要ポイントをチェック!

前章までに、減農薬・低農薬野菜の問題、酸素と結びつくことで毒性が増してしまう農薬の問題。 そして新たなタイプの農薬・細胞浸透系農薬のリスクについて考えてみました。
この章では食の安全の切り札である「有機野菜」の問題について必要なポイントを確認していきましょう。
■目次
1、有機野菜の知られざる実態は!?
2、買う側はよく分からないものに高額投資!?
3、農薬の種類は拡大中!制度本来のあり方は!?
4、有機野菜の見えにくい問題点はココ!生食のリスクは!?
5、長年寝かせることが大前提!その管理の徹底は大丈夫!?
6、畜産業の問題と農業の問題はリンク!消費の意味に鋭く迫る!
農薬の問題を考えるにつけ、やはり毎日食べるべきは断然、
「無農薬の野菜!」
それが安全な食卓づくりの結論と言えるでしょう。農薬が使われている限りは食の安全を確保できない。だから
”無農薬の野菜を毎日食べたい!”
そんな思いから有機野菜が人気なのですが、その実態はというと・・・、
30種類以上の農薬の使用が許可されています。
法律で許された農薬なら、何回使っても構わない。使用回数の制限なく自由に散布できる。つまり許可された農薬ならば、
たとえ100回使っても、1000回使っても「有機野菜」と名乗っても良いことになっているのです。
”有機野菜は無農薬野菜”、多くの人がこのような誤解をしているのですが、そうではありません。実際はこのような制度になっているのです。
■農薬表示の義務がない!
問題は減農薬野菜と同じでその有機野菜に、
どのような農薬がどのくらい使われているのか?
買う側の私たちには一切分からないことにあります。
その有機野菜が無農薬なのか?それとも許可された農薬を20回使っているのか?もっとたくさんなのか?よく分からないまま買わざる得ない。農薬回数を表示する義務が一切ないからです。
有機野菜は一般の野菜に比べて1.5倍~3倍くらいの値段がするものです。たとえ高額であっても安全には変えられない。その思いから割高でも購入するのだから、
どのような農薬を何回使ったのか?
きちんと買う側に知らせ、その上で判断してもらうようにする。それは最低限必要な措置ではないかと思うのです。
でも、
「有機で認められている農薬なんだから比較的安全なんじゃないの?」
そう思われるかもしれません。でも、実際は安全性を考慮して許可農薬は選ばれているのではありません。栽培の都合や外国との貿易をスムーズに行う目的で選ばれているのです。
■農薬の種類は増加中!
2000年に有機認証制度が発足した時は、使用許可農薬は21種類でした。それから18年が経過して30種類以上に広がっています。
本当に食べる人の健康を真剣に考え、環境負荷を減らすための有機認証制度であるなら、拡大ではなく削減されるのがあるべき姿なのでしょう。
21種類の農薬で始まったものが、今は10種類までに削減できました。あと10年でこれを、
「ゼロにまで持っていきます!」
これが有機認証の本来の姿ではないかと思うのです。今後ますます許可農薬の拡大が進むのではないか?そのように危惧する声も少なくないのです。
有機野菜は無農薬ではない。有機野菜を選ぶなら選ぶで、このことを前提にしておく必要がある。そうでないと高額の投資が全く意味のないものになってしまいかねないのです。
また前章で述べた低農薬・減農薬の作物には、有機認証で認められた農薬は使用回数にカウントしない。このような不思議なルールもあります。
ボルドーという硫酸銅と消石灰を混ぜ合わせた殺菌剤は有機認証で認められた農薬です。野菜や果樹、お茶などの栽培で広く使われますが、これをいくら使ったところで低農薬野菜の農薬回数にはカウントされない。有機と低減野菜はこのように抜け道の多い制度になっているのです。
■有機野菜の隠れた問題は!?
また、有機野菜は農薬のみならず、
「有機肥料の問題」もあります。
化学肥料は危険だけど、有機肥料なら安全。多くの人はこのように思っています。化学肥料は人工物だからキケン、でも有機肥料は自然のものを使っているから安全。
そう漠然と思っているのです。でも、
「有機野菜はサラダで食べるな!」
そう警告する研究者もいる。”有機野菜を食べる際は必ず火を通すように!”、このような指摘もあるのです。
なぜサラダで食べてはならないのか?
それは寄生虫や病原菌による感染症のリスクが高いから。肥料管理の甘さが問題、その危険性を考慮した呼びかけなのです。
有機肥料とは家畜の糞尿などの自然物を肥料に使った野菜のこと。家畜の糞尿といえども「汚物」なので、人体に好ましくない菌がさまざま含まれています。
だから有機肥料を使う際には、長期の熟成が大前提になります。長く寝かせれば寝かせるほどリスクを低減することができると考えられているからです。
問題はその期間。
長期熟成とはどのくらいが目安なのか?
人によっては3か月、半年。そういう人もいれば、最低3年は寝かせる必要がある。いや3年じゃ短い、5年は必要だ。
このようにバラバラなのが現状です。
■有機肥料は完熟が前提!
有機肥料は熟成・完熟の定義が存在していないので、生産者それぞれでバラバラ。
有機肥料の管理はすべて生産者に任せられているのです。
3年、5年と長期に寝かせる生産者もいあれば、ニオイが消えたからOKとばかりにほぼ生に近いようなものを土に混ぜ込む作り手もいる。
それどころか、生のまんま使っているケースもある。中には人糞も!?こうした情報がいろいろあるわけです。
家畜の糞尿は排泄物であり、汚物なので、当然そこにはさまざまな菌たちがいる。そのまま肥料として大量に使ってしまえば、野菜に付着したまま病原菌が増殖してしまう。
病原菌が付着した野菜を生で食べてしまえば、感染症や寄生虫のリスクが高くなってしまう。だからこそ、
- ”有機を食べる際は必ず火を通すように!”
- ”どうしても生で食べるなら、徹底して洗うように!”
そのように警告されているのです。
有機肥料の問題は農薬と同じで、買う側の私たちにどのような肥料がどのくらい使われているのか?
一切分からないことにあります。
一般野菜に比べて高額なのだから、使った肥料の中身を公開することも不可欠なのではないかと思います。
■畜産業と有機農業の問題
また現在の畜産業は薬剤依存、薬剤漬けの状況で、エサの中に混ぜられる抗生物質などの殺菌剤、家畜を大きく育てるためのホルモン剤などが問題になっています。
またエサとなるトウモロコシや大豆などには遺伝子組み換え作物が使われるケースも多いのです。
畜産業はすっかり薬剤依存型の産業になっているのですが、家畜の糞尿に含まれ残留する、これらの薬剤については有機認証制度では一切の規制がありません。
当然、エサの遺伝子組み換え作物についても何ら規制がないのが現状です。有機肥料にどれだけ抗生物質やホルモン剤、遺伝子組み換え作物の残渣が含まれていようと構わない。
それらの残留物が付着した野菜をそのまま食べてしまう。このように肥料管理の甘いことが理由で、
「有機野菜は気持ち悪い!」
そのように思われる人も少なからずいるのです。
有機野菜の宅配選びをするに当たっては、使われた農薬の種類や回数、そして有機肥料の中身をしっかり公開している団体を選ぶこと。
このことが大切になるのです。
※有機宅配大手のカタログ例:有機とのみ表示で農薬使用の有無は不明。肥料の中身も一切不明。
買う側が必要な情報を持って厳しく接しない限り、販売側はいつまでもぬるま湯から脱却しようとしないものです。
消費は選挙と同じで、清き一票を投ずる行いなのだから、有機野菜の宅配団体を選ぶに当たっては、厳しいまなざしで安全性のチェックを行うことが必要。
安全な食材は与えられるものではなく、作り手と暮らし手とが一緒に作り出していくものでもある。あなたの高額な投資が生きるか死ぬか?それはしっかりと知識を持ってそれに適った宅配業者を選ぶことが大切になるのです。
ここでは有機野菜の問題点について考えてみました。
次章では、もう少しだけ突っ込んで有機野菜の安全性について考えてみます。
>>次章:第四章へ
『有機野菜は農薬とサヨナラできない!?紅葉に学ぶ自然な野菜のあり方とは?』
前章へ:有機野菜の宅配業者が宣伝する残留農薬検査のカラクリは!?
■この章のまとめ
・有機野菜は無農薬ではない ・有機野菜の農薬は公開の義務がない ・有機農薬は削減ではなく拡大している ・有機野菜のサラダは感染症のリスクがある ・有機肥料の熟成期間の定義は存在しない ・動物の糞尿・厩肥の薬剤残留などの規制はない
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■参考文献
・騙されるな。有機野菜が「美味しくて、健康的」とは限らない:http://r-table.info/2014/08/624/