有機野菜の宅配業者が宣伝する残留農薬検査のカラクリは!?

有機野菜の宅配業者の宣伝文句。そこには色んなまやかしがあることも知っておく必要があります。
ココでは農薬に関する表記や宣伝の問題、かつてない新たな事態について考えてみましょう。■目次
1、残留農薬検査のカラクリは!?
2、万物は生成し流転し変化する!
3、雨に濡れるだけでこんなことが起きる!?
4、新種の農薬の登場が食の安全の常識を変えた!
5、農家にとっては好都合だけど、私たちには最悪!?
6、日本国民である以上はこのリスクを逃れらない!?
「残留農薬検査を実施中!」
有機野菜の宅配業者はこんなことをよく言います。続けて、どの野菜も残留なしで、安全性の高さが
「証明されました!」
このように宣伝してくるわけなのです。それを聞くと、だったら安心して食べられるわ。こう思ってしまうわけですが、これにはカラクリがある。
農薬は一度使われると姿形を変えてしまうものだからです。
■農薬は姿を変える!?
鉄を置いておけばサビがつきます。鉄が酸素と触れることで「酸化」するからです。これと同じで、農薬を使えば空気中の酸素と結びつき、
「酸化農薬」
に変貌してしまう。そしてただ変化するばかりでなく、毒性も高くなってしまう。こうしたことが実際にあるのです。
比較的安全といわれ野菜の栽培に広く使われている農薬に、「スミチオン」があります。安全でありながらも殺虫効果が高いと言われる農薬なのですが、スミチオンが酸素に触れると、
「スミオキソン」
に変化していきます。
そうなると化学変化を遂げているので、残留農薬検査でどれだけスミチオンを調べてみても検出されない。既に「スミオキソン」に変化しているからなのです。
スミチオンではなくスミオキソンを検出できる試薬を使えば、高い濃度で残留が認められる。このようなデータもあります。残留農薬検査にはこうしたカラクリがあるのです。
スミチオンがスミオキソンに変化すると1万倍もの神経毒性を帯びてしまう。こう指摘し、警告を発する研究者もいるのです。
■雨に濡れただけなのに・・・
またアセフェートという農薬がありますが、商品名は「オルトラン」。
ホームセンターなどで誰でも買うことができる農薬なのですが、これはアブラムシや毛虫などの駆除に使われます。このアセフェートに雨が当たると、別の物質に変化します。それが
「メタミドホス」です。
メタミドホスといえば、2007年12月に起こった中国産冷凍毒入り餃子事件で有名になった殺虫剤です。メタミドホスは日本国内での使用が禁止されている農薬なのですが、アセフェートは広く使われています。
園芸店やホームセンターなどでも誰でもカンタンに入手できる農薬だからです。
ネットなどでこの化学変化を調べてみると、”加水分解されて・・・”という文言が出てきます。難しそうでたじろいでしまいがちなのですが、何のことはない。
「水に触れること」
散布された農薬に雨が当たればメタミドホスに変化してしまうのです。当然アセフェートの残留検査をしてみても検出されない。「メタミドホス」に変化しているから。このようなカラクリがあるのです。
いくら日本国内でメタミドホスの散布を禁止してもアセフェートが許されている限りは何の意味もない。雨が降れば変化してしまうのですから。そしてメタミドホスの神経毒性はアセフェートの30倍にも上るといわれているのです。
その物質と別の物質とが結びつくことで、毒性がより一層強まってしまう、これは「相乗毒性」と言われています。ひとたび農薬が使われれば、太陽光線や雨、酸素などにより化学変化を遂げてしまう。
「残留農薬はありませんでした!」
私たちはこうした宣伝文句を決して鵜呑みにしてはならないのです。
■洗えば大丈夫なの!?
農薬は怖いし、相乗毒性も恐ろしいわ。でも、農薬は洗えば落ちるって聞いたけど、
「それはどうなの?」
そんな風に思われるかもしれません。それについては異論はありません。今も昔も農薬は洗えば落ちる。このことには変わりはないからです。
野菜を育てるのにたくさんの農薬を使わざるを得ない理由の1つに、雨や露などで農薬成分が流れてしまうこともあります。だから何十回もしつこく撒かなくてはならないといった面もあるのです。
そのため野菜の残留農薬も水でしっかり洗えば落とすことができるのです。
「そうか、よく洗えば農薬の成分も、相乗毒性のキケンも減らせるんだね」
確かにそうなのですが、でも・・・、今はそこに新たな問題が生じているのです。それは、「洗っても落ちない農薬」です。このタイプの農薬が登場し、広く使われすっかち普及しているのです。
洗っても落ちない農薬は「細胞浸透系」と言われるもので、散布すると植物の細胞内部にまで農薬成分が入り込んでいきます。
こうなると水では落とすことができない。どんなに洗っても全くムダ。野菜の表皮が傘やレインコートの役割を果たしてくれるので、雨や露などで剥がれ落ちる心配がない。よって効果が長持ちする。
こうした農薬が開発され、実際に使われているのです。
■手間を省けて高く売れる
細胞浸透系農薬は農家にとっては大変都合の良いものといえます。
通常の農薬なら何回も撒かなくてはならないところを、これを使えばずっと少ない散布回数で済んでしまう。効果が長持ちするからです。
しかも少ない散布回数で作物を育てることができるので、
「減農薬!低農薬野菜!」
そういとも簡単に表示することができてしまう。”安心野菜!”とついたロゴとともに、高い値段で売ることができるのです。
このように農家にとっては、農薬散布の手間が省け、しかも高い値段で売ることができるので広く普及し、すっかり定着しているのです。
でも、それを買う側の私たちにとっては最悪。
どんなに洗っても農薬成分を落とすことができない。野菜の細胞内に農薬が入っているので、表皮や葉っぱをどれだけ洗っても意味がない。
野菜と一緒に農薬成分も食べるしかない。
このような厄介な状況があるのです。
■各国で相次ぐ規制
細胞浸透系農薬は「ネオニコチノイド系農薬」と言われます。
1990年代に販売され始め、今ではすっかり定着し、多くのお米や野菜、果物に使われているのです。その残留性の高さと細胞浸透性の高さから私たちの体に入ると細胞の中にまで入ってしまう。
神経や免疫系、脳へのダメージが問題視され、市民団体から使用禁止を求める声が相次いでいるのです。ミツバチの大量死や赤とんぼの激減は、この農薬によるものと指摘されています。
その浸透性と残留性の高さから子供の脳に与える計り知れないダメージが声高に叫ばれているのです。
ヨーロッパではネオニコチノイド系殺虫剤が全面使用禁止になり、アメリカやカナダの一部の州、ブラジル、韓国でも規制されています。
でも日本ではいまだ規制がなく、さらなる使用拡大に向けひた走っているのが現状です。日本政府はこの細胞浸透系農薬のさらなる普及を目指してなのか、残留農薬の基準値を大幅に緩和しました。
最も象徴的なのが、カブの葉へのネオニコチノイド系殺虫剤・クロチアニジンの残留をこれまでの2000倍にまで拡大したのです。
規制をするどころか、大幅に緩和してしまった。2015年のことです。
今でも広く普及し、実際に使われているのですが、残留農薬の基準の改定は今後より一層の使用拡大が進んでいく。このことを物語っているのです。
それは残留性が極めて高く、浸透性の高いネオニコチノイド系農薬を日本国民は大量摂取してしまう、このことを意味しているのです。
残留農薬検査をしているから安心、減農薬だから安心。
そのような言葉は虚しいものとして響きます。私たちの食の安全に貢献するのではなく、小手先でゴマカすための手口に過ぎない。そのようにも思えてしまうのです。
有機野菜の宅配選びを行うに当たっては、こうしたことをしっかり伝え、必要な情報をすべて開示している業者を選ぶことが大切になるのです。
私たちの食を巡る状況は深刻で難しい方向にひた走っているようにも感じます。こうした中、食べものの安全、食卓の安全を守るために選ぶべきものは何か?
そこで切り札となるのが「有機野菜」の存在です。
次章では、有機野菜を巡る状況を知ることで、安全で自然な宅配選びに必要なポイントを学んでいきましょう。
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■この章のまとめ
・残留農薬検査にはカラクリがある ・細胞浸透系農薬は洗浄を無意味にする ・細胞浸透系農薬は低・減農薬表示を無意味にする ・細胞浸透系農薬は体内での長期残留が心配される ・子供の脳や神経系統へのダメージは計り知れない |
■参考文献