雑草は除草剤で駆逐・でも草には草の使命がある!

敵の設定。敵を作ることで内部は結集するもの。
■目次
1、イヤなものほど成長に役立つ!?
2、農業の憎き相手は雑草!草の使命とは!?
3、雑草はメッセンジャー!土の現在を映す鏡!
4、低い草が生えてくることの意味!土の進化を反映!
5、除草剤1回のみ使用のお米は果たして安全なのか!?
6、耐性を獲得した草が日本の農業を滅ぼしてしまう!?
イヤなもの。
邪魔なものや不都合なもの。人生にはこうしたものが色々あります。
”アイツさえいなければ!”
そう思ったりもするのでしょうが、実はイヤなものこそが自分を成長させる起爆剤になったりもする。
”憎いアイツを土下座させてやる!”
こうして努力を重ねた結果、一角の人物へと成長している。そうしたケースも珍しくないのです。
人間万事塞翁が馬、何が災いとなり、幸いとなるか?は分からないものなのです。
■農業の憎き相手とは!?
農業において、農家が目の敵にするものは、
「虫・菌・草」
の3つです。特に草は作物に与えたはずの養分を横取りしてしまう。さらに丈が高くなり、日照の妨げにもなる。
草は邪魔!、そうした意味を込めて「雑草」と呼ばれたりもするのです。
確かに肥料を使う農法において「草」は邪魔な存在です。でも、肥料も農薬も一切使わない「自然栽培」を行う上で、草は実に重要な役割を果たしてくれます。
草の根が地中深くに入り込むことで、過去に投入してきた肥料や農薬の残骸を土から除去することができるからです。
草は土の汚れをキレイにする掃除部隊でもあるのです。
■草が教える土の沃土!
また、草は土の状態を教えてくれるメッセンジャーでもあります。
作物を植えるのに土の状態がまだまだ未熟な土には、ススキやカヤ、セイダカアワダチ草などの背の高い草が生えます。
この状態では無肥料・無農薬で作物を栽培するのには適さないので、一番良いのは草を生やしっ放しにする。背の高い草たちは根っこも長く深く入るので、土の中を起こして空気を入りやすくするなど通気性を確保してくれる。
根が土を耕し、生き物が生息できる環境を整えてくれるのです。この段階で植えるのに適した作物はイモ類、豆類、イネ科の作物、果樹などが良いようです。
生えるがままにした状態で草を抜いてみると、クモやアリ、ダンゴムシなどが根の周りに巣を作っていることが分かる。こうした虫たちも、未熟な土を肥沃にする大きな役割を果たしてくれるのです。
作物に虫がついてもアリやクモが捕食して食べてくれる。そして冬を前に草が倒れると、そこに水と光と菌が働き、新しい土が作られていくのです。
(※掘り起こした土の中・蜘蛛の巣が張り巡らされている)
■低い草の意味は!?
背の高い草が土の耕運を終えると次に生えてくるのが、背の低い草。
スギナやヨモギなどが生えてきます。こうした草が生えると土が作られてきたサインとなる。無肥料・無農薬でも栽培品目を適切に選択すれば、立派な作物を育てることが可能になります。
ニンジンや大根などの栽培も可能になってくるのです。
そしてスギナやホトケノザなどが生えて来れば土の肥沃度が高くなった証。こうなると栽培可能な品目が様々に広がってくるのです。
こうした草の変化を逃さず読み取り、土の状態に適した作物を選択することが大切になるのです。
また、農業の天敵としてモグラは嫌われ者です。DIYなどに行けばモグラ駆除剤なども売っています。でもモグラが土の中を縦横無尽に動くことで、空気の通りが良くなっていく。
そうなると、アリやクモなどが生息しやすい環境がさらに作られるので、ますます自然栽培に適した土が出来上がっていくのです。
(※モグラが開けた土の中の穴)
■除草剤1回のみは安全か?
このように草には様々な役割があるのですが、有機を含めた一般の農業では草は「敵」とされています。
だから除草剤を使って、草が生えないように徹底的に退治するわけです。よく有機農産物の宅配業者は、お米の栽培に、
「除草剤1回のみ」
を許可するのが普通です。
そう言われると、人体や環境に配慮して”偉いな~”と思ってしまうのですが、1回撒けばそれで草の対策は終わりであることを意味しています。
除草剤を使わないのと1回使うのとでは天地ほどの差があるわけです。
また、通常稲作においては3回~5回くらいの除草剤を散布しますが、その安全性は回数だけでは計り知れない面もある。
最強の除草剤と言われる「SU剤」を使えば5回撒かなければならないところを1回で済んでしまう。こうした”一発剤”といわれる除草剤も登場しているからです。
いわば「劇薬」なのですが、これは農家にとって大変便利で重宝される農薬です。何回も散布しなくて済むし、しかも「除草剤1回のみ!」このような安全性のアピールもできてしまうので、高値で売ることができる。
実に便利でありがたい除草剤というわけです。いまではこうした除草剤が田畑に濫用されていることも知っておく必要があるのです。
除草剤といって思い出すのはベトナム戦争です。下半身が繋がった結合双生児として生まれてきたベトちゃん・ドクちゃんの事例を思えば、やはり使わないのに越したことはありません。
お米は私たちの主食だから他のどんな食材よりも食べる量が断然違います。多く頻繁に口にするものなので、できるだけ無農薬で除草剤なしのお米や無肥料・無農薬の自然栽培米を選んでほしいと思うのです。
またジャガイモの収穫の際にも除草剤は使われます。収穫部分は土の中なので地上部分の苦葉や茎の部分が邪魔になる。葉や茎が残っていると、収穫の際に機械が止まるなど効率が悪くなってしまうのです。
そこで収穫日の10日くらい前に除草剤を散布します。葉や茎を枯らして収穫作業が楽に終わるように除草剤を散布するのです。
このように除草剤は農業においては当たり前のように使われています。敵である草を排除するためには仕方がない。そのような理由で使用が正当化され、日々たくさん使われているのです。
■スーパー雑草で農業が滅ぶ!?
「効果があれば副作用がある」
SU剤のような劇薬を使い続けた結果、除草剤に耐性を持つ「スーパー雑草」が問題となっているのです。
生きものが薬剤に対して耐性を持つ、それは菌において見られます。殺菌剤で殺されても全部は死なない。中には必ず生き残る菌がいる。
生き残った菌はその殺菌剤に対して耐性を獲得していて、そこから耐性を持った菌がどんどん増殖されている。これが医療の現場でも、農業においても、家庭においてもみられる「薬剤耐性菌」です。
菌は分単位で増殖していくので耐性を持つと夥しい被害が生じてしまうのです。
菌に比べて草は繁殖に時間がかかるので、耐性を持ちにくいと考えられてきました。でも、田畑で大量に使われ続けた結果、「スーパー雑草」が繁茂して除草剤が効かない状況を招いているのです。
今後も除草剤の濫用を続ければ、ますますスーパー雑草が勢力を増してしまう。そうなると稲作も畑作も膨大な手作業での除草を強いられることになる。
ただでさえ高齢化し跡継ぎの問題があり、自給率の低い日本の農業。手作業での除草となればこの国から農業が消えてしまう。
そうした状況を招いてしまいかねない。こうした深刻な問題へと発展してしまうのです。
除草に劇薬は使わない。できる限りクスリに依存しない、そうした農業のあり方が今、問われているのです。面倒でも手間がかかってもクスリに頼らない。草を敵視するのではなく草と共生する農業のあり方。
こうした農業の実践と拡大が今まさに求められているのです。
食べる人の健康、自然環境への影響を真剣に考えて努力と研鑽を惜しまない農業の担い手を美味しく食べることで応援する。
そうした都市生活者の購買が何よりも後押しになります。食べる人あっての農業なので、ぜひ除草剤などの農薬を使わずに安全で自然な農産物を作る無肥料無農薬の自然栽培の生産者を応援してもらいたいと思います。
■このページのまとめ
・農業の問題は「虫・菌・草」の3つである ・背の高い草が生える理由は土が未熟である証 ・背丈が低い草が生える理由は土の肥沃になった証 ・除草剤1回のみのお米は安全であると言いきれない ・除草には”一発剤”といわれる強い除草剤が使われる ・草は除草剤に対して耐性を持ちスーパー雑草が出現している |
■参考文献
・日本の水田雑草におけるSU抵抗性研究の現状について
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