自然食業界キャリア15年のOBが綴る

個性を失くした野菜たち・自然で安全な野菜の元はタネにあり!

2018/12/16
 
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生協、有機野菜の宅配団体などに15年在籍し、自然食業界の裏表を目の当たりに。本当に安全に食べられる食材とは何か?日々追求しています。

似ているものを好きになる。私たちにはこうした傾向があるようです。類は友を呼ぶ、そんな風にいわれますが全く一緒はどうなのでしょう?

今回は安全な食卓と全部一緒の野菜たちについて考えてみたいと思います。

■目次
1、みんな同じは不自然なのか!?
2、個性あふれる品種の滅亡の背景には!?
3、タネの操作を推し進めた原因は何か!?
4、効率を上げ安値で食べものを供給せよ!
5、”産地”はこうして作られた!そこで何が起こった!?
6、個性種の復権は国民的課題に!?食料なくして安全なし!

 

小さい人、大きい人、やせた人、恰幅の良い人。

 

人それぞれ体型もさまざまですよね。

 

生き物の原則は”千差万別”。一人ひとり違ってが当たり前。体型も性格も考え方も主義主張も、違いは個性として尊重されるべきなのでしょう。

 

でも、

 

スーパーで売られている野菜は全部同じ。背丈も太さも同じだし、姿形も全部一緒。

 

すっかり慣れっこになっているのですが、よくよく考えればこれはかなり不自然なこと

 

それは生き物の定めに反しているようにも感じるのです。

 

単一化の背景には!?

「青首大根」。

スーパーで売られる大根のほとんどはこの青首大根です。味は可もなく不可もなく、まあまあな感じ。これといった特徴のない品種といえるでしょう。

 

いまや日本中どこに行っても、青首大根ばかりになっていますが、かつてはそれぞれの土地に根ざした個性的な大根の品種が色々とあったわけです。

 

三浦大根は有名ですが、源助大根、聖護院大根、練馬大根、大蔵大根、赤大根、二年子大根・・・・。

 

このようにたくさんの品種がそれぞれの地域で食べられていたのです。色も白一色ではなく、赤や青、紫といったようい、実に多様な品種が日本各地で栽培されていたのです。

 

それが戦後の歩みの中で、いつしか青首大根ばかりになってしまった。地方ごとの個性的な品種はすっかり姿を消してしまっている。

 

それは一体なぜなのか?
どうして個性やバラエティは失われてしまったのでしょうか?

 

タネが変わった!?

その理由を端的にいえば「タネ」に行き着きます。

 

タネを作り変えることに比例して、地域に根差した野菜が次々に消えていったのです。タネが変えられた背景にはいろいろとありますが、大きくは3つ。

 

・輸送上の問題
・販売時の効率
・栽培方法の大改革

 

この3つが背景にあるのと思うのです。

 

野菜は「鮮度」が大切なので、遠路からの輸送には適さない面があります。時間がかかればかかるほど鮮度が落ちてしまい、売りものにならなくなってしまうからです。

 

野菜は輸送に不向きである。そのためその土地で作られた野菜はその土地で食べるのが大前提。こうしたものであったわけです。

 

でもそれが戦後の経済復興と高度成長により一変しました。道路網が次々と整備され、都市と地方とを短時間で結ぶことが可能になった。

 

これによりタネを作り変える必要が生まれたのです。

 

新たな輸送手段の確立は”鮮度が命”の野菜に革命をもたらしました。都市へと短時間で大量に輸送できるようになったのです。

 

ご当地アイドルが全国デビューを果たすかのように都市へ!都市へ!と、地方から野菜がどんどん送り込まれていったのです。

 

そしてこの輸送上の課題に適したタネが設計されていったわけなのです。

 

例えばトマトのMサイズなら、段ボールの箱に24個ピッタリ入るようにタネが設計されています。キュウリなら箱に45本、キャベツは6玉といったようにタネの段階で箱に隙間なく入るように設計されているのです。

 

大きさが揃っていないと、トラックの荷台で箱の中の野菜が動いてしまう。動けば折れたり、潰れたり、破損したりと売りものにならなくなってしまう。

 

こうして箱に隙間なく入るように、野菜のタネが設計されたのです。

 

ここで重視されたには味ではなく、あくまで輸送。折れやすい品種や大きすぎる品種、色が落ちやすい品種なども輸送に向かないものとして栽培されなくなっていきました。

 

巨大な三浦大根などはトラックの荷台で場所を取るのでかさ張ってしまう。大量輸送に適さない品種として栽培されなくなったのです。

 

味はそこそこだけど折れにくくサイズも手ごろ、こうした日本中が青首大根になったというわけです。

 

効率を上げるために!

タネの変化は販売する際の効率も大きな要素の1つです。

スーパーなどで販売する際に形や大きさが揃っていないと効率が悪く、扱いにくい。形や大きさがバラバラだと値札を1つずつ変える手間ひまが生じ、労力が余計にかかってしまう。

 

それでは人件費が膨らんでしまいます

 

野菜の規格を統一し、同じ長さ、同じ大きさに統一されていれば一斉に同じ値段をつけるだけで良い。規格の統一は、手間ひまコストを削減するための欠かせないものとなったのです。

 

タネの作り変えの背景にはこうした輸送上の問題や効率重視の事情もあるわけです。

 

産地は作られた!

昔は農家といえば米農家のことで、野菜専門の農家はかなり少ないものでした。

 

でも、戦後の混乱期を経て高度経済成長を迎えると、お米余りが顕著になった。そうなると米を作る代わりに、野菜や果樹、畜産などに米農家を転身させる必要が生じた。

 

野菜専門農家、果樹専門農家、畜産専門農家といったように、それぞれを専門的に栽培する「産地」が作られていったのです。

 

群馬の嬬恋村ならキャベツ、八ヶ岳など標高の高いところではレタス、深谷といえばネギ

 

このように単一品目の栽培を行うように!、それぞれの地域で栽培が奨励されました。東京・名古屋・大阪といった大都市の消費者向けに、単一の野菜を一斉に作り、大量に輸送する時代になったのです。

 

地元固有の野菜のタネで栽培すれば、形も大きさもバラけやすくなります。また農家が自分でタネを採っているようでは効率が悪すぎて大量に作れない。

 

そこで普及したのが、タネ・農薬・化学肥料がセットになった栽培方法。タネも農薬も肥料も全て、メーカーから買うものへと変わっていったのです。

 

農家自らがタネを採るのではなく、企業から買う。それが当たり前になって今日まで続いているのです。

 

一斉にタネを播き、姿形が一緒の野菜を育て、一斉に大量収穫が可能になる。虫・病気が出れば農薬ですぐさまそれを駆逐する。

 

このようなものへと野菜は変えられていったのです。

 

そして個性ある地元の野菜が次々に姿を消し、みんな同じの個性の乏しい野菜ばかりが売られるようになったのです。

危険

 

全部同じのリスクとは!?

でも、

 

全国一律で同じ品種を作ることはリスクの高さを意味します。

 

全部同じであることは、不作の際には右へ倣えで不作になってしまう。不作となれば価格が一気に高騰し、私たちの財布を直撃してしまう。

 

ホウレン草1束が500円、その背景にはこうしたタネの事情もあるのです。

 

みんな一緒はやっぱり不自然。命とは本来バラけるものなのです。

 

背が高いのがいたり、低いのがいたり、ずんぐりがいたり、細いのがいたりすることで、次の世代へと繋がれていく。高いのは全滅したけど、低いのは大丈夫だった。寒さに弱い品種は全滅だけど強い品種は生き残った。

 

このように遺伝情報をバラけさせることで、その種が守られていく。不足の事態に備えてのリスク分散、こうした面もあるのです。

 

農家が自分でタネをとる習慣が廃れて久しいわけですが、それは食糧の確保の面でもリスクが高くなってしまいます。

 

毎年タネ屋からタネを買うことは、農業がタネ屋の支配下に組み込まれてしまうことを意味するからです。タネがなければ作物を育てることができない。

 

食料を作れなければ生命の危機に瀕する。タネの購入はタネ屋に日本人の生殺与奪の権を与えることを意味しているのです。

 

国民の食糧を少数の企業に握られることは決して望ましいことではありません。生命の糧を少数者に渡すことは食糧安全保障上の大きなリスクになってしまうのです。

 

また売られているタネはその段階から肥料・農薬漬けであることも忘れてはなりません。こうしたタネは農薬や化学肥料を使うことを前提にデザインされたタネ。

 

食の安全を大切に考える私たちは、タネの段階から農薬が使われていることも知っておく必要があるでしょう。普段はあまり意識されることはありませんが、私たちはもっとタネについて関心を持つ必要があります。

 

現在、前時代の「カロリー」に変わって「食の安全」を求める声が国民のニーズになっていると言われます。安全なお米や野菜作りの最初の一歩は安全なタネの確保が不可欠になります。

 

地方ごとの個性的な品種を復権することは、企業が独占しているタネを国民の手に取り戻すことにも繋がっていくのです。

 

大量輸送の時代を経て、これから本格的に人口減少時代を迎えます。私たちの時代の必要に即して作り手も、売り手も、暮らし手も変化する必要に迫られていると感じます。

 

■このページのまとめ

・同じ野菜はタネによるもの

・輸送上の問題から伝統品種は廃れた

・販売上の効率を上昇も伝統種衰退の要因

・都市と農村の役割分担で産地が形成された

・農薬・化学肥料・タネの栽培方法が広く普及

・タネの購入は食糧の安全保障上のリスクがある

・安全なお米や野菜は安全なタネから作られる

 

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■参考文献
野菜の産地研究の課題と動向

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